縦裂FNO

日々、見るもの流れゆく物の例え。

電気箱

冬場、エレベーターのボタンというのはそこへ行くのを拒むかのように凶器となる。静電気がきまくるという意味で。

一回目、一階から四階へ。壁に備え付けられているスイッチ、④を押すとバチンときた。ただ静電気というより普通に感電だろって程に痛くて僕は真顔になった。右手全体が痺れている。

二回目、四階から一階へ。さっきの静電気のことを思い出し、エレベーターへ乗り込むと同時にビビる。明らかに挙動不審。僕は意を決して①のボタンを叩くように押そうとしたが、ふとポケットにボールペンが入っていることに気が付いた。これで押せばいいじゃん、と、僕は安心感からか、意気揚々とペン先で①のボタンを押す。すると青白い火花が散りながらバチっと音がなる。右手はビリビリでまたも真顔になる。真顔になっていると三階でどっかの業者のおっさんが乗ってくる。手には謎の白いゴムチューブ(約三十センチ)。それでエレベーターのボタンをぽちぽちと押し始めた。僕はさらに真顔になる。するとおっさんが喋る。「あ、もしかしてバチっときた?ここね、気をつけた方がいいよ、すんごいから。一本あげようか?絶縁チューブ。」「いや、別にいいっす。」

三回目、一階にいた同僚に声を掛けて二階へ上がる。僕は何も言わず同僚の後をつけ、②のボタンを押すのを見届ける。バチンと音が鳴る。「うわ!いてぇ!静電気やべえ!」

四回目、二階から三階に上がる。僕はまたも何も言わずに同僚の後をつけ、エレベーターに乗り込む。同僚が③を押す。バチンと音がする。「いてぇ!は?なんだよこれ。さっきもきたぞ。乾燥が酷いのか。」

五回目、三階から一階へ。僕はリュックから上履きを取り出し、その先端(ゴム)でボタンを押す。さすがにもう電気は流れない。やべぇ場所だけど、これで一安心と考えながら無意識にエレベーターの壁を触る。するとバチン。

帰り際、どっかのお堅い営業マンがエレベーターに乗り込もうとしている。数十秒後、「うわ!いってぇ!なんだこれ!」と大きい独り言が聞こえてきた。