縦裂FNO

日々、見るもの流れゆく物の例え。

知らないどこかで

 

 午前2時は過ぎていたと思う。真夜中のことだ。僕は部屋の電気を消して間接照明を灯すとベッドに潜りこんだ。スマホに充電器に差し込みアラームをセットする。そしてすぐに読書に取り掛かった。

 2~3ページも読むと、だんだんと目が文字を追う事に慣れてきて、本を読むことに没頭できるようになる。いつもならこのまま約1時間は集中して読書を続けるところだ。しかし、この日は20分もしないうちに集中が切れた。原因はどこからか聞こえてくる異音だった。

 20秒ほどの等間隔で「ココッ」という音が聞こえてくる。しかし音の所在がわからない。左を向くと少しだけ音が大きく聞こえてきて、右を向くと少し離れて聞こえる。そこで音が大きく聞こえるほうに移動してみると音はほとんど聞こえなくなってしまった。さらに部屋の中をすこしづつ移動してみるものの、音の出所は全く掴めず、僕は直接脳内に響いているのではとすら考えてしまった。

 こんな事で読書の時間が削られるのは馬鹿げているので、この異音は無視して読書を続けることにした。

 しかし今度は時計の秒針の音が気になりだした。冷静に考えてみると、1秒毎にカチコチ音が鳴っているという事実がとんでもなく異常な事のように思われた。息や瞬きを意識するととても苦しくなるのと同じことだ。

 相変わらず「ココッ」という音は聞こえてくるし、秒針はうるさいし、加えてなぜか蝉まで鳴き出してきて僕はもはやノイローゼ気味だった。