縦裂FNO

日々、見るもの流れゆく物の例え。

アンダーグラウンド

地下鉄に乗り込むと、僕はすぐに端の座席に腰掛け目を閉じる。車内は空いていた。電車はゆっくりと動き出す。 2,3駅通過した頃だろうか、ふわりとした風が僕の頬を撫でる。薄く目を開けると、窓が開いていた。そこから見えるのは、ただ真っ暗な景色。トンネ…

引き延ばされる一瞬

例えばこんな場面、モデルは郊外のマンションに住む27歳女性とする。 良く晴れた土曜日、彼女は少し長めの昼寝から目覚めた。枕元の時計は午後2時30分を指している。彼女は横になったまま数秒間、天井の一点を見つめ、それから短いため息をつくと、ゆっくり…

・季節外れは ・ハードモード ・前日

・季節外れは つい最近まで東京の最高気温は連日35℃を超えていた。もはやこの気温だと季節を楽しむどころか、下手に出歩くと熱中症で生命に危機が及ぶ程の暑さである。しかしここ数日はそれまでの猛暑が嘘のように涼しい。もはや夜や明け方は涼しいどころか…

知らないどこかで2

意識を保つことができる限界の状態、眠りに落ちる直前というのは、体の感覚が異常なほど過敏になっている。例えば、知り合いが耳元で何かを語りかけてくる想像をする。すると、その想像上の知り合いは普段の想像の何倍もの現実味を帯びて僕に語りかけてくる…

知らないどこかで

午前2時は過ぎていたと思う。真夜中のことだ。僕は部屋の電気を消して間接照明を灯すとベッドに潜りこんだ。スマホに充電器に差し込みアラームをセットする。そしてすぐに読書に取り掛かった。 2~3ページも読むと、だんだんと目が文字を追う事に慣れてきて…

いつも何かが考え事の

「ステム君(僕)って人の話聞いてないよね」って言われることが多い。その通りだ。僕は人の話をあまり聞いていないし聞かない。しかしこれには理由がある。最近気付いたことなのだが、それは他人が僕に話しかけているときが一番考え事に集中できるからだ。…

映画は男向け?

最近なかなか面白い映画論文を読んだので、分かりやすかった部分をちょっと紹介。その論文で語られている事は「映画は男向けだ!ふざけるな!」というもの。 覗き見る対象としての女性 まず、映画がなぜ楽しいかということを考えると、それは「覗き」という…

朝ならば

以前は休みの日に早起きする習慣を身につけていたけれど、大学生になった頃くらいからだろうか、その習慣はすっかり失われてしまった。大学生にもなると、多くの人がそうであるように飲み会やレポートで徹夜することは当たり前となる。そうなると必然的に寝…

知ってること、知らないこと

マルセル・プルーストの小説『失われた時を求めて 第4巻 花咲く乙女たちの陰にⅡ』の序盤にこんな例え話がある。 牢獄か施療病院で生まれた子供が、人間の器官は干からびたパンと薬しか消化できないと長らく思い込んでいたのに、あるとき不意に、桃も杏子も…

ドレスデン・ホロコースト

ドレスデン爆撃と聞いてそれを知っている人はどれくらいいるだろうか。あまり多くはないはずだ。かく言う僕もその爆撃があったこと自体は知っていたが、名前だけ、という程度だったのだ。しかし、最近読んだカート・ヴォネガットの小説『スローターハウス5…

眠ることへの恐怖心

変な話だが、僕は悪夢を見るときはそれが事前にわかる。 眠気というのは一種の快楽だ。息を吸い、そして吐き出す度に心地よい吐き気のような感覚が全身に巡り、だんだんと体が泥に沈むように重くなってゆく。通常ならばこの段階で意識が朦朧としてきて、頭…

友人の父の死に思うこと

先日、中学時代からの知り合いである友達の父親が亡くなっていたことを知った。その友人とは中学時代は本当によく遊んでいて、大の親友だった。家が近かったということもあり、彼の家へも何度も遊びに行っていたので、当然その父親と何度も顔を合わせていた…

建物の昼と夜

今は取り壊されてしまっているが、家から自転車で15分程度走ったところにゴルフの練習場があった。だだっ広い土地の外周には緑のネットが張られていて、昼夜問わず大人たちが打ちっぱなしに興じていた。僕はなんとなくそれを見るのが好きで、少し遠周りにな…

覚めない夢は

僕は電車に乗りこむなりすぐに最初のページを開いた。カート・ヴォネガット・ジュニアの自伝的小説『スローターハウス5』。この日に備えて買っておいた本だ。 これは先日の日曜日のこと。僕は朝6時54分に最寄駅から電車乗り込み、7時35分にはJR京葉線で東京…

夏はよく人が死ぬ 後編

僕は無響室に入った事がある。無響室というのは字の如く、音が吸収され響かない部屋のことで、ここで声を出しても耳をふさいで喋っているような感じがするし、声もいつもより大きく発声しないと相手に届きにくい。手を叩いたときに出るパンッという音も、部…

青春への決別

人間はいつ、「青春が終わった」と感じるのだろう。僕はこの問を何人かの知り合いに尋ねたことがあるが、「10代まで」と答える人もいれば、「大学を卒業したら」、「30代になったら」と答えは人によってばらばらだった。 三島由紀夫は『潮騒』を29歳で、村…

語られることへの言い訳

村上春樹の処女作『風の歌を聴け』の冒頭は非常に面白い。僕はこの冒頭が大好きだ。ここで語られていることは、29歳の青年村上春樹が、書くことへの決意と「僕には何も書けないのでは?」という恐れ、そして書かれる内容への言い訳が素直に語られている。そ…

夏はよく人が死ぬ 中編

父とプールに向かう道中、特に会話らしい会話はしなかった。 黙って車に乗っていると微かに走行音が聞こえる。エアコンの音も聞こえるし、ラジオも聴こえる。会話は無かったとしても決して無音ではない空間。でも僕は「静かだなー」と思ったのを覚えている。…

夏はよく人が死ぬ 前編

小学3年生の頃の話。 8月に入り夏も盛りの頃、僕は何をするでもなくただボーっと夏休みを過ごしていた。友達もそれほど多いほうでは無かったから、やることと言えば宿題をするか、横になって天井を眺めているか、そんな夏休みの日々。しかし退屈だったという…

雨の日の入浴

幼い頃、雨の日は早くお風呂に入る習慣があった。学校からの帰り道に少し濡れて、体が湿っぽいからだ。ポツポツと雨音を聞きながら湯船に浸かっていると不思議な気持ちになった。屋根を取り払い、雨に打たれながら入るお風呂を想像する。祖母に「濡れたんな…

睡眠不足のサカナ。最期に見る夢。

植物は昼に光合成を行い酸素を吐き出す。夜は呼吸で二酸化炭素を吐き出す。こう習ったときに、植物も寝るのかなと思った。別に光合成や呼吸が睡眠に関係あるわけじゃないけど、なんとなくそう思った。枯れてしおれる前に新芽の頃の夢を見るのか、雨が降らな…

駅の階段は水中に

今日、僕は駅の階段を降りていた。目の前ではロングスカートを履いたお姉さんがリズミカルに階段を駆け下りる。テンポはタンタンタンタンタンッ。スカートは膨らみ、そしてしぼむ。それを何度も何度も繰り返す。右足を宙に踏み出すとスカートは空気を孕んで…

見たまま感じるまま

-----水は透明だろうか 多くの人は「そうだ」と答えると思う。ではなぜ‘水色‘という色があるのだろうか。絵を描く際、見える風景に素直になれば水は無色透明のはず。 -----太陽は赤いか黄色いか では太陽は赤(外国では黄色)のイメージなのだろうか。実際は…

見てるようで見ていない

東京の高円寺の商店街を歩いていると建物が取り壊されていた。 「あれ、ここになにがあったかな」と考える。何度も通っているはずの道。しかしそこにあったはずのものを思い出すことはできない。 何度目だろう?と思う。更地になっている場所を見るとそこに…

大崎の赤い目 その2

前回の続き。 僕は大崎から五反田へ歩き始めた。 東京の人ならわかると思うが、大崎から五反田までの道のりは徒歩10分程度で人は多くないものの交通量は多くお店も多い。五反田に近づけば近づくほど通りの賑わいは増してゆく。そんな中で「大崎から五反田ま…

大崎の赤い目 その1

東京の大崎という街の高架下を歩いていた。 品川方面へ新幹線の高架下をテクテクと歩く。この品川方面というのがキモだ。戸越方面、五反田方面は街の賑わいが途絶えることはないが、品川方面となると人もお店も消えて、まさしく「道路」しかないのである。 …

ピンクの看板

僕はピンク色の看板のクリーニング屋はすべて同じ系列の店だと思っていた。 つまりピンク色の看板のクリーニング屋はすべてホワイト急便なのだと思っていたワケだ。これじゃまるで日本にはホワイト急便と白洋舍の2つのクリーニング屋しか存在していないよう…

「秘密」と「内緒」は違うのか

誰だって秘密を知ってしまうことはある。誰だって内緒にしていることはある。なんとも似てるようで違うこの2つの言葉。 あくまで僕個人の考えなのだけど、「秘密」には優越感が、「内緒」には劣等感が潜んでいる。 例えば ・自分は友達のNとXがこっそり付き…

はじめに

僕がたまに書いてた日記を文字に起こし、ブログという形で公開しようと思う。(しかし恐らくは過去のものと最新のものが入り混じって時系列はめちゃくちゃになるかと) なぜ日記を書くかというと、日々の生活の中で発される機会の無さそうな言葉を文字として…